全互協の社会貢献基金制度
助成先団体結果報告
7. 國學院大學 大学院 特別研究員 田口 祐子
テーマ
現代における子どもの人生儀礼の変遷と地域差に関する実態調査
概 要
現代における子どもの人生儀礼に関する調査について以下3調査を実施。
- (1)平成26年より継続実施している東京における昭和以降の七五三の状況を知るためのインタビュー(東京在住60歳以上女性への3つの立場〔子供時代、母親、祖母〕における七五三インタビュー)の元となる明治大正期の実態を確認する。
- (2)1960年代に実施された産育儀礼をはじめとした実態調査(依田新ら「農家における産育儀礼ならびに年中行事の実態調査」『日本女子大学紀要 家政学部』17、1970年6月)の調査地の一つ、茨城県猿島町において当時と同項目で聞き取り調査を行い、子どもに関する儀礼の変化と当時の背景を再確認する。
- (3)茨城県で昨今特徴的にみられるホテル・旅館などでの「七五三披露宴」の実態と変遷を 調査し、この現象の地域性と現代性を取り出す。
調査内容
- (1)これまで七五三は先行研究が少なく、おこりから変遷、現状に至るまで、実態を把握することが難しかったことから、調査者はこれまで昭和以降の実態をインタビュー調査してきた。その調査を補完する意味で、明治大正期の実態、変遷を当時の新聞資料から整理・収集した。今後の七五三の研究を進める上で一つの手立てを示すことが出来た。
- (2)依田らの研究は、戦後の特定の時期の産育儀礼の実態に関する貴重な数値データである。今回、調査地の一つであった茨城県猿島地域の方々にインタビューし、その時期に関する資料を集めることで、データについてより奥行きのある理解が可能となった。調査を通じて指摘できる重要なポイントとして、本地域では調査時にあたる60年代は生活の大きな転換期であり、産育儀礼も変化したもの、変化していないものが混在する結果となっていることがある。依田らの結果は、この地域の特徴を示しているというよりも、この時期の農村地帯における産育儀礼の特徴をよく示した結果といえそうだ。
- (3)茨城県におけるホテル等を利用した「七五三披露宴」は、現代における七五三の地域性を示す特殊な例といえる。この特殊な例を調査することで、新たな切り口から現代の七五三の理解を促進する手立てになると考えた。また、茨城県のホテル等の協力を得て、特殊な祝い方の地域の特定、全域の変化の様子と時期の概要を知ることができた。特に本調査より、「七五三披露宴」は現在ほとんど実施されておらず、参加者が核家族と祖父母を中心とした小規模なものとなっていることがわかった。この形は2・30年前まで実施されていたとする回答が多く、その背景に古くから農村地帯でみられた地域への世代交代の披露方法(特に子の七歳を祝う形で)と、この時期にみられた盛大な結婚披露宴の先細りを懸念するホテル側の新たな開拓案とが結びつき、またバブル期といった条件の影響が指摘できる。「七五三披露宴」は、変化する直前の七五三のやり方と結びついたため定着しなかったといえそうだ。現代における儀礼理解につながる興味深い結果を得ることができたといえる。