全互協の社会貢献基金制度
助成先団体結果報告
園田学園女子大学 人間健康学部 人間看護学科 教授 中村陽子
看取りの文化が担う終末期ケアと地域再生
兵庫県・高知県・福岡県・熊本県・宮崎県の僧侶、老人施設・その他施設(ホームホスピス)職員、檀家 の人たちを研究対象とし、半構成式面接方法によるインタビューを実施した。関西の都市部をはじめ、九州において、これまで地域において育まれてきた看取りの文化の継承を目指した取り組みが「ホームホスピス」という新しい暮らしの場として取り組まれている。病院でも施設でもない「終の棲家」としての「もう一つの家」としての役割を持っている。介護保険やその他の制度の制約を受けないその暮らしの場は5人~6人で地域の民家を活用しながら地域の相互扶助やしきたり、風習が大切にされている。尼崎市の運営担当者は「特別なことは何もない。ただ寄り添うだけ。これまで私たちは死を家族で、地域で看取ってきた」という。また、その「暮らしの場」には僧侶が月参りに来訪し、寺を中心とした「看取りの文化」が生活習慣として存在していた。兵庫県豊岡市においては、浄土真宗の僧侶が中心となって認知症高齢者対象の「グループホーム」の運営活動や「ひきこもり」の活動支援をNPO組織として取り組んでいる実態があった。仏教慈悲の施しの具体化は「ダーナ」という組織の活動理念となり、地域の力、「相互扶助」の再生に向けた新たな取組みとして実践されている。都市部を除く調査地域は、高齢化率も高く宗教(神社仏閣)の役割としての死の教育や福祉支援は脆弱化しているが、しかし、そこで暮らす人々は終末期を「昔の人々は立派に死んでいった」と語る。そして、その人々を支えるための「看取りの文化」の再生が地域の支え合いの力になると考え、創意工夫し活動する人々がいる。